5. 貼り付けに適した/適さない場所

適した場所

平滑で清潔な面

最も施工適性が高いのは、ガラス・金属・塗装済みの平滑面です。面精度が高いほど接地面積が確保でき、初期タックと最終接着が安定します。

貼付前は中性洗剤で油分を除去し、アルコールで仕上げ拭きを行います。15〜30℃の環境で施工すると糊の活性がよく、気泡や浮きの発生も抑えられます。

ワックスや撥水コートは必ず除去しましょう。

屋内平滑壁

テクスチャが浅い塗装壁やパーティションは、案内表示やピクトに好適です。下地が弱いと剥離時に塗膜を持ち上げる恐れがあるため、事前に小片でテスト貼りを行い、糊残りやはがれの有無を確認します。

新規塗装は硬化が進むまで待機し、艶あり・艶消しで見え方が変わる点も考慮します。

空調の吹き出し口近くは埃付着に注意します。

車両・商業サイン

車体やショーウィンドウは屋外掲出でも視認性が高く、ブランド露出に効果的です。曲面やパネルの継ぎ目がある場合は分割計画を立て、曲率に合うシートを選定します。

洗車機や風圧がかかる部位は端部の圧着を強め、反射材やすりガラス調との組み合わせで夜間視認性やプライバシーにも配慮します。

施工後は養生時間を十分に確保しましょう。

適さない箇所

凹凸・ザラつき面

モルタルの粗面や梨地仕上げ、木目の深い素材などは接地面積が稼げず、初期タックが弱くなります。

凹みに空気や水分が残りやすく、経時で端部から剥がれが進行するリスクも高まります。

どうしても使用する場合は粗面対応フィルムやプライマー、熱処理を組み合わせますが、仕上がりと耐久の両面で制約が大きい点を理解して選定してください。

汚れ・油分・粉体塗装

油膜・シリコーン・ワックス・水垢は密着不良や糊残りの原因です。粉体塗装は表面エネルギーが低く、粘着が乗りにくいケースがあるため要テストです。

脱脂は中性洗剤→水拭き→IPAの順で行い、表面が乾燥安定してから施工します。

つや消しや防汚コートは相性差が大きいため、サンプルで24〜48時間の追跡確認を推奨します。

高温・低温・高湿

極端な温湿度は粘着力と寸法安定に悪影響です。低温下では初期タックが出にくく、反発でエッジが浮きやすくなります。

高温では基材が軟化し伸びやすく、縮みや糊はみ出しの原因になります。

高湿は内部に水分を抱え込み白化や剥離を誘発します。施工は15〜30℃・相対湿度30〜70%を目安にし、直射日光・雨天・結露環境は避けましょう。

耐久性を保つポイント

下地の選定

再塗装直後は溶剤が残留しやすく、粘着との相性が不安定です。メーカー推奨の完全硬化期間を待ってから施工しましょう。

劣化やチョーキングした塗膜は密着が弱いため、研磨・洗浄・プライマーなどで下地処理を実施します。

曲面や可動部は応力集中が起きるため、分割やカーブ対応シートでリスクを分散させると長持ちします。

エッジ保護

剥離の起点は端部と角に集中します。施工直後に端から数ミリの範囲を二度押さえし、必要に応じてエッジシーラーや透明ラミで保護します。

風圧や洗車の影響を受ける方向を想定し、ノズルやブラシがエッジに直角に当たらない運用を徹底します。

角はRを設けると応力が分散し、収縮や引っ掛かりによる浮きを抑制できます。

清掃方法

清掃は柔らかい布と中性洗剤を基本に、優しく押し拭きします。

強溶剤・研磨剤・硬毛ブラシ・高温スチームはフィルムや粘着を傷め、端部浮きや退色を招くため避けましょう。

鳥糞や樹液は早期に水でふやかしてから除去し、強く擦らないのがコツです。

洗車機利用は施工後24〜48時間以降、エッジに直撃しない角度で行うと安心です。