4. 貼り方(施工方法とコツ)

ドライ貼り

下地クリーニング

貼付前の成否は下地清掃でほぼ決まります。まず砂埃をやさしく除去し、中性洗剤で油分を落としてから真水でリンスします。

完全乾燥後、イソプロピルアルコールで最終拭き上げます。ワックスやシリコーン、撥水コーティングは密着不良の原因になります。

布は糸くずの出ないものを使い、施工面温度は15〜30℃を目安に整えましょう。

位置決め・ヒンジ法

仮合わせで水平・中心線を決め、マスキングテープで上端または中央に“ヒンジ”を作ります。

片側の台紙を5〜10cmだけ剥がして折り返し、基準線に沿って位置を微調整します。

伸ばさずに軽圧でスキージを当て、外側へ空気を逃がしながら徐々に台紙を抜き取ります。

大判はパネル分割と補助テープで歪みを防ぐと精度が上がります。

圧着・気泡抜き

圧着は中心から外側へ扇状にスキージを運び、一定の角度と圧力を保つのがコツです。

角や端部は二度押さえで糊を活性化します。

残った微小気泡は24時間で拡散することもありますが、残留が気になる場合は極細ニードルで端に小孔を開け、空気を逃してから優しくならします。

過度な加熱や強圧は伸び・銀粉化の原因です。

ウェット貼り

噴霧液の作成

再位置決めの猶予が欲しい大判や曲面では、霧吹きで薄い作業液を使います。

基本は水に中性洗剤を数滴(0.1〜0.3%程度)加えます。

濃過ぎると粘着が残りづらく、薄過ぎると効果が出ません。

貼付前に施工面と粘着面の両方へ均一に噴霧し、埃を巻き込まないよう一方向に拭き残しを作らないのがポイントです。

すべりを活かして位置合わせ

作業液で滑る間に基準線へ合わせ、中央から外へスキージで液を押し出します。

力を点で当てず面で均一に当て、重ね線や角部は特に丁寧に施工します。

曲面は中心から高い部分を先に固定し、低い方へ追従させるとシワを防げます。

冬場は室温を上げるか軽く温風を当て、粘着の初期タックを補助します。

乾燥時間の確保

ウェット貼りは内部の水分が抜けるまで待つのが肝心です。

季節や素材にもよりますが、20℃前後で数時間〜一晩の養生が目安です。

早く転写シートを剥がすとエッジ浮きや白化の原因になります。

剥がす際は低角度でゆっくり行います。

残留水分は端から押し出し、必要に応じて低温で軽く加熱し乾燥を促進します。

仕上げ・メンテ

転写シートの剥がし方

転写シートは45°以下の低い角度で、フィルムを寝かせるようにしてゆっくり剥がします。

文字が持ち上がる場合は一旦戻し、スキージで再圧着します。

直射日光下や低温時の剥離は粘着挙動が不安定になるため避けましょう。

微細パーツはピンセットで押さえながら進めると、角の欠けや伸びを防止できます。

端部シール

剥がれやすいのは端部と角です。

施工直後に端から2〜3mmの範囲を念入りに二度押さえし、必要に応じてエッジシーラーや透明フィルムで保護します。

曲面や風圧を受ける部位は特に重点管理が必要です。

洗車機や高圧洗浄のノズルはエッジに直角で当てない運用ルールを掲示すると、寿命のばらつきを抑えられます。

洗車・清掃

施工後24〜48時間は洗車・強い清掃を避け、粘着が安定してからメンテナンスを開始します。

普段の清掃は柔らかい布と中性洗剤で優しく行います。

溶剤系クリーナーや硬いブラシ、高温スチームはエッジ浮きや退色の原因です。

鳥糞や樹液は早めに水でふやかし、擦らずに押し拭きで除去するとダメージを抑えられます。